Violet Moon










―――しあわせになりなさい
しあわせになりなさい、セレニティ
こんどこそ、あなたの愛する人と


漆黒の闇に浮かぶ、シルバーミレニアム。
主を失ったその宮殿は柔らかな光を湛えてうさぎを迎え入れた。
最後に見たのは、再生したばかりの姿。
眩いばかりに輝く宮殿ではなく、地球を選んだ自分にクイーンは最後の姿を見せてくれた。
それは確かに愛情に溢れた母の姿で、けれど同時にどこか悲しげな微笑だった。

「クイーン……」

母はあの時、どちらの人の事を言っていたのだろう。
地球の王子か、天王星の戦士か。
ずっと、彼こそが運命の相手だと思っていた。
エンディミオンが傍に居れば他は何もいらないと思えるほど、愛しかった。
初恋だと信じていたが、今思い起こせば……どこか、天王星の戦士に彼は似ていたのだ。
母はさぞ、驚いただろう。
娘の想いの強さに。
封じ切れなかった面影を見て、慄いた筈だ。

―――その恋だけは、許す事が出来ません
他の相手なら許したでしょう、けれど。
けれど、星の守護を持つ彼との恋だけは―――

日頃、優しい母の驚きに強張った顔が忘れられない。

「忘れられなかったの……」

引き裂かれて終わった初恋を。
二度目の恋も…似た人を選んでしまう程に。

「ごめんなさい」

辿り着いた祈りの間で深く頭を垂れた。

『おだんご』

柔らかく呼んでくれる、あの声を。
凛と立つ、あの姿を。
気まぐれなあの瞳を。

「あたしは、彼を忘れられませんでした」

未来を、運命を裏切ってでも。

「……あたしは、はるかさんを選びたい」

月の光が溢れる中、うさぎは呟いた。













うさぎちゃんがやっと動いてくれましたtt
次ははるかさんが動いてくれるといいなあ