Violet Moon







その言葉を耳にして、うさぎは固まった。

「…………」

あんなに切なそうな声で、あんなに辛そうに。
何故、自分なんかを。
彼ならばどんな女性でも手にする事が出来るだろうに、そう思って、しかし胸が痛んだ。

「…あたしは……」

たとえばいつも一緒に居る、みちるなんかは彼にとってもお似合いだと、そう思うのに。
イヤダ、と。
胸の奥で叫ぶ声がする。
誰かの隣で幸せそうに笑うはるかなんて、見たくない。

「…………どうして……?」

なぜ、今頃になって。
うさぎは自身を抱きしめた。

「だって、あたしは……月のプリンセスで、セーラームーンで、未来のクイーンで、まもちゃんがキングで……ちびうさが生まれるはずで……」

明日は結婚式で。
なのに、どうして。

「……あたしは…………っ……?」

―――ソノ記憶ハ、ホントニタダシイノ?

心の奥から声がする。

「あ…………」

見開く瞳に映る、月。
青みがかった紫の。
月の王国が滅ぶ前に確かに見た、色。

「……月と地上の住人は通じてはならない……違う……戦士…と王族が……通じる事は許されない……」

擦り替えられた記憶が戻って行く。
いや、塗りつぶされた記憶と言った方が正しいか。
月と地上の住人が通じてはならないなんて掟はなかった。あったのは、戦士と王族の恋を禁ずる掟。

「あたし……は……」

モウ……ココニハ、イラレナイ。
うさぎは何も考えられず、力を使った。
眩い光が辺りを覆う。
次の瞬間、うさぎの姿はそこになかった。










やっとタイトルのVioletMoonが出てきました。
前世で何があったか、書こうと思ったけど……どうしようかな。
で、まあ……もうちょっと、続きます。