ultimus






「はるかさん……」

どこかで声がする。
何よりも大切で、誰よりも愛しい人の声が。

「愛してるから、だから」

ああ、これは。
髪は金。
瞳は青。
華奢な身体に全世界の運命を背負って立つ人の声。
目を開けなきゃ、いけない。
彼女の苦しそうな声を遮らなければ。

「ごめんなさい、はるかさん。わたし、行くね」

遠ざかる気配。
僕は何をしているんだ、動け!
固く強張る。
動けない身体、動かない身体。
止めなければいけないのに。

「はるかさんが大好き、愛してるわ」

だから、行ってくるね。
最後に聞こえた言葉は、彼にとっての絶望の言葉。
身体を拘束する不穏な力に精いっぱいの力で抗って、立ち上がる。

「!」

ようやく映した世界には、彼の愛しい人が一人。
ただ一人で、混沌へと駆けだす後姿だけが残されていた。

「…………うさぎーーーーーーっ……」

セーラーコスモスのコスチュームを身に纏って、駆けていた彼女が彼の声に振りかえる。
そうして、華が綻ぶように笑った。

「他の誰が死んでもいいの、はるかさんが。はるかさんだけが生きていれば、私はそれで幸せだから」

無敵のパワーを、セーラーカオスに向けて放つその姿はいつの間にかクイーンへと変化して。
はるかは地を蹴った。

「君が居なくなるならば、僕の生になど何の意味もない」

ウラヌスへとその身を変化させてクイーンと並び立つ。
護るなんておこがましくて言えない。
ただ。
共に生き、共に滅びたい。
それがはるかの望みだった。

「たとえ、この星が滅びようとも……」


それが、この星に響いた最後の声。


残ったのは青白く輝く月光と、静寂だけだった。









連載の続きを書いてたのだけど…。
違う物になってしまった。暗いのは一緒ですねw