多分、きっと
うららかな春の日の昼下がり。
美味しいランチの後は公園に行って健康的に遊んで。
このまま、先に進んでもいいかなとか思っていたのだ。
彼女としては。
「ルーシィ……」
なのに、恋人候補の彼が真剣で思いつめたような顔で自分の名前を呼んだ時に、違うな……と思ってしまった。
「……ごめん」
唇を許してもいいと思った筈なのに。
「嫌いじゃないの。でもやっぱりトモダチ以上には思えない、ごめんなさい」
正直にまっすぐ目を見て謝れば、彼は仕方なさそうに笑った。
「そっか……ルーシィ、これからは友達として付き合ってくれよな」
「―――うん、ありがとう。……今日は帰るね」
どうして駄目なんだろう。
一緒に居て楽しい。
見た目だって、良い。
なのに―――。
「やあ、おかえり。ルーシィ」
「ロキ…………あんた、また来てたのね」
部屋のドアを開けると同時にかけられた声にため息をつく。
「今日はデートだって言ってなかったっけ?戻るの早いね」
ルーシィのベッドに長い脚を組んで座る気儘な星霊の言葉。
「あー……うん、まあ…どうでもいいじゃない、別に」
「えー?彼氏にしてもいいかなって言ってたじゃないか」
どういうわけか今日は星霊の姿を取っていない彼の頭を、相変わらず無駄に整った顔だなと思いながらルーシィは軽く叩いた。
「いたた……酷いなあ……」
「余計なお世話。それにそこはベッドよ、勝手に座らないで」
フェミニストを公言しておいて、女性のベッドに座るとは何事か、と思う。
「ああ、ごめんね」
素直に腰を上げ、謝ったロキは不意に笑顔を向けた。
「ね、ルーシィ。デート取りやめになったんだったら僕と食事に行こう?」
勿論、僕のおごりで。
そう続けるロキに二度目の溜め息。
気にかけてくれるけれど、深くは聞いて来ない。
こちらの気分を察して気を使ってくれる。
おまけに外見は二重丸。
日常的に接しているのがこれじゃあ……
「―――たまには、誘われてあげてもいいわよ」
彼氏が出来ないのは半分以上こいつのせいだとルーシィは心の片隅で呟いて、差し出されたロキの手を取る。
「残念。僕としては『いつでも』一緒にいたいのに」
「はいはい…………そうね、考えておくわ」
「え」
一瞬固まったロキに、ルーシィは笑った。
「ルーシィ、本気にしていいの?」
「……好きにすれば?」
「本気にするからね?」
「だから、好きにすれば?って言ってるでしょ」
その後続いたやり取りに、早まったかなあと彼女が後悔したのは言うまでもない。
うーん…おかしい
もっと甘いお話になるはずだったのに…。