Sentimental







お願いだからそんな不安そうな顔をしないで。

そう言いたくなる時がある。
たとえばキスの後とか。

「ルーシィ……」

蚊の鳴くような声で自分を呼ぶ時とか。
優しい抱擁の後とか。
好きだと言われて、頷いた。
好き、と気持ちも伝えた。
ちょっと手間はかかったがキスもした。
身体だって、彼女は初めてだったけれど………重ねたのに。

「好きだよ、ルーシィ」

彼が望むとおりに、ここに居るのに。
どこにも逃げては行かないのに。

「ロキ……」

長く綺麗な指が、頬に触れる。
輪郭を確かめるように辿るその動き。

「……いい、かな?」

サングラスの奥に隠された瞳に熱がこもる様をじっと見ていたら、そう聞かれた。

「…うん」

吐息混じりの声で答えて背中に腕を回す。
きっと聞いても答えてくれない。
彼は大人で、ルーシィよりも遥かに長い時を生きていて。
おまけに男女の機微にはとんでもなく長けているのだから。

「好きよ、ロキ」

だから不安になんてならないでほしい。
その瞳も、声も姿も。
存在すべてを愛おしく思えるのだから。

「うん……有難う、ルーシィ」

触れてきた唇に瞼を降ろす。
次第に深くなるキス。
一枚、また一枚と脱がされる衣服。
ロキの表情が好きだ、と思う。
飄々として、謎めいた顔だったり、真剣な顔。
少し曖昧な笑顔だったり。
何を思って不安になるか、漠然と気付いているけれど。
それでも。
彼女が一番好きな、心からの笑顔で居てほしい、と望む。

「大好きよ、ロキ」

ルーシィは素直な気持ちを唇に乗せて、その身体に彼の体重を心地良く受け止めた。

「――――――生きている限り、あたしの全てをあなたにあげるから」

だからどうか、笑顔でいて下さい。













うん、まあ薄暗いのは通常営業。