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『いってらっしゃい』



「じゃあ、行って来るよ」

青いフェラーリ……AZZURRO HYPERIONを背景に綺麗に笑うから、あたしはどんなに不安でも送り出してしまう。

「うん……気をつけてね」

いつもは困るくらいにあたしを気遣って優しくしてくれる人だけど。
レースに出かける時は別。
天空の星の守護そのままに風となって、自由に。

「淋しいなら一緒に来る?僕は大歓迎だよ」

悪戯っぽく囁く声に頷きそうになるけれど、それはやっぱり出来ないから、笑う。
この人が好きだと言ってくれる笑顔で、無事に帰って来る事を祈りながら。

「淋しいけど我慢する。だから、無事に帰ってきてね?」
「約束するよ、仔猫ちゃん。土産を楽しみにしておいで」

亜麻色の髪から覗く瞳が悪戯っぽい光を放つ。
ゆっくりと重ねられる唇。

「いってらっしゃい、はるかさん」

やがて、青い風が走り去るのをあたしは見送った。

「女王になんか、ならなきゃ良かったな……」

こっそり呟いて。
見上げた空はどこまでも晴れていた。









ネオクイーンセレニティの旦那設定はるか。
レースに出てるらしい……。




『朝』


目覚めて直ぐに隣の温もりを探す。
昨夜腕の中に閉じ込めて眠ったその人は長い金の髪を朝日の下遊ばせて未だ眠りの中だった。
決まった未来を壊して、生まれて来るはずの生命まで奪って手に入れた彼の永遠の女性。

「朝だよ、うさぎ……起きないと、ヴィーナスが叩き起こしに来るぞ」
「ん……もうちょっと……」

女王になる前から寝起きの悪かった彼女。
亜麻色の髪の奥、悪戯っぽく光った瞳。
はるかはその人の桜色の唇に口接けた。

「……っ……お、おはようございます……」

その感触に驚いた彼女は真っ赤な顔で目を開き、消え入りそうな声で朝の挨拶を返した。






うさぎちゃんの寝起きの悪さはクイーンになっても直っていないらしい。