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『彼者誰時』(シャルマリ)


夜と朝との境界線がぼやける頃にいつも夢を見る。
彼が手放した少女が微笑んでいる夢を。
何故見るのかわからない。
見るのが辛いとさえ思う。そんな夢など見たくないと。
けれどその夢を見ている間だけ彼は幸福になれるのだ。
後悔しているのだろうか、と自問する。
そんな感情とは無縁で生きてきた彼が。

「……マリナ……」

心の中で名前を呼べば夢の少女は嬉しそうに笑った。
そして彼はその夢を封印する。
今日一日を生き抜く為に。

―――また、夢で彼女が微笑むのを見る為に。









昼のイメージで書きたかったお話。