狂い恋う






己に言い聞かせるように呟く。
これは、悪夢だ。
現実ではないのだ、と。
繰り返す。
けれど。
それは、紛れもない、現実だった。
身体を這う痩せた手。
双丘の奥を穿つ熱。
……灼熱の痛みと引きつるような細い快楽。


ともすれば彼岸へと意識を飛ばしそうになる己を叱咤し、現実を見据えた。
途端に、襲い来る絶望。

―――私に覆い被さる、私を犯すこの男は、『京極堂』だ。

「……どうして…………?」

私を此処に引き戻した彼が何故。
何故再び彼岸へと向かわせようとするのだろう……。
問いの答えはない。
縛られた両手が痛かった。
穿たれた後孔も酷い痛みを伝えてくる。
抱え上げられた両脚。
私は意識を手放し、同時に闇から伸ばされてきた得体の知れぬ物に心を委ねた。
再びの彼岸は酷く甘く私を迎え入れ、私は安堵する。
このまま、もう二度と私は戻らないだろう。
それほどにその闇は心地良かった。








気を失ってしまった関口を中禅寺は掻き抱く。
関口を彼岸へと追いやってしまってでも、独占したかった。
狂いそうな程の恋慕の果てに、彼は。

「関口君……これで君は、」

―――――――僕だけの物だ。